2020年12月21日月曜日

聖ニコラスの奇跡

これは遠い,遠い冬の夜のこと--。  あるところに3人の娘とその両親がおりました。昔は大層華やかな暮らしをしていたそうですが,事業の失敗からその賑わいは消え,今ではもう見る影もない没落貴族です。  ある日の晩,父親と母親が難しい顔をして一番上の娘に声を掛けました。その冷やりとした緊張感は一番上の娘にも伝わりました。父親は重い口を開き,「この家の財産がもう底をつきそうだ。金のために身売りも視野に入れて考えなければならない。」と言いました。両親の真剣な表情とその空気の重さに一番上の娘は息を吞みました。 その夜,一番上の娘は一人寝床で考えに耽りました。一番上の娘にとって,その夜は長い,長い夜になりました。お金が尽きれば家族全員が路頭に迷ってしまう。一番上の娘は身売りを受ける決心をしました。 次の日の朝,3人の娘たちは両親の大きな声に目を覚ましました。一体全体どうしたものか。娘たちは急いで両親のもとに駆け寄りました。両親は腰を抜かしており,その視線の先には暖炉の側に干してある靴下がありました。娘たちはそっとその靴下を覗き見ました。すると,その中には金貨が入っていたではありませんか。一番上の娘はそのお金で身売りを免れ,その後,結婚することが出来ました。  二番目の娘のときも,同じことが起きました。娘たちの両親はこの金貨を恵んでくれている人が誰なのか確かめなければならないと思い,毎夜,毎夜その人を待ち構えました。そして3番目の娘のとき,ついに金貨を放り込んだ人を見つけたのです。  その人はニコラス。彼は司祭で,日頃から困っている人や貧しい人を助けていました。しかし,そのことを言いふらしたり,驕ったりすることは決してありませんでした。娘たちの両親に対しても,「このことは誰にも言わないでください」と言って,立ち去りました。しかし,ニコラスの慈悲の精神に感動した両親が娘たちに話したり,近所の人たちに話したりしているうちに,多くの人が知るところの話となり,こうして現代を生きる私たちにまで知られるようになりました。そして,このニコラスこそクリスマスのサンタクロースの由来となった人物です。クリスマスに靴下を下げておくと,サンタクロースが煙突から入ってプレゼントを入れる風習も彼のこのお話から生まれたものなのです。  ニコラスが奇跡を起こしたように,今年も世界のどこかでまた一つ小さな奇跡が起こっているかもしれませんね。 皆さんにも,クリスマスの奇跡が起こりますように---
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